建設キャリアアップシステムは公共工事では必須?今後の動向も
公共工事に元請け業者や下請け業者として参加している建設業者にとって、建設キャリアアップシステムの登録は必須になりつつあります。本記事では、既に登録済みの事業者から、まだ未登録で登録を迷われている事業者様に向けて、改めて建設キャリアアップシステムの公共工事での活用状況を解説し、今後の動向についてもご紹介していきます。
※建設キャリアアップシステムって何?
建設キャリアアップシステム(略称CCUS)は、技能者の就業履歴などのキャリア情報を記録していく国が管理するシステムです。技能者に発行されるカードを現場でタッチすることで活用することができます。
詳しくは「建設キャリアアップシステムとは?10分で解説!」を参照。
建設キャリアアップシステムの公共工事における活用状況
令和5年現在、建設キャリアアップシステムの公共工事での活用が広がってきています。特に下の3つの政策により、公共工事の現場にキャリアアップシステムが導入される事例が増えています。
・モデル工事の推進
・自治体独自の加点
・経営事項審査での加点
しかし現時点では、公共工事を受注する元請け業者や現場に入る下請け業者に、建設キャリアアップシステムの加入が義務付けられているわけではありません。ただし、上記のような政策により、実質的に義務化のような流れになってきています。元請けから、現場に入る為にはシステムに登録しカードを持っている必要があると言われるケースも今後は増えていくと予想されます(記事後半で詳細を説明します)。それでは公共工事でのキャリアアップシステムの活用例として、3つの政策についてそれぞれを詳しく見ていきましょう。
モデル工事の促進
国土交通省は、公共工事の全国の現場で、CCUSモデル工事を推進しています。CCUSモデル工事とは、公共工事において、CCUS活用目標の達成状況に応じて工事成績評定で加点又は減点する工事のことです。今のところ、国交省直轄の土木工事や一部自治体の工事など、限られた工事でのみ実施されていますが、この流れは地方自治体の工事や、土木以外の工事にもどんどん波及していくことが予想されます。キャリアアップシステムの登録や活用が、今後多くの公共工事の工事成績評定に影響してくることが予想されます。
自治体独自の加点
全国の自治体では、独自の建設キャリアアップシステムに絡んだ加点等の取り組みが行われています。例えば、長野県は、システムへの事業者登録、雇用する技能労働者の技能者登録を行った企業に対し、入札参加資格付与時における主観点の加点について検討中で、また令和2年4月より、総合評価落札方式の案件において、システムを現場で活用することを宣誓する場合に加点されます。また福岡県では、競争入札参加資格審査における地域貢献活動評価項目において、建設キャリアアップシステムの事業者登録をしていることを加点対象としています。
同様の取り組みを検討している自治体は他にも多くあり、今後このような取り組みはますます増えていくことが予想されます。
経営事項審査での加点
公共工事を請負う業者が必ず受ける必要がある経営事項審査(以下、経審)ですが、この経審の加点にもキャリアアップシステムの登録や運用が項目として追加されました。レベル判定におけるレベル3と4の技能者の数や、一定期間にレベルアップした技能者の数に応じた加点や、現場での導入実績に応じた加点などが行われ、キャリアアップシステムを活用していない場合、経審の点数にも悪い影響が出るようになりました。
※詳しくは「建設キャリアアップシステムで経審に加点!未登録は減点も?」を参照。
これらの政策は今後ますます注力される事が予想され、今後も公共工事での建設キャリアアップシステムの存在感はますます増していくことが予想されます。
今後の動向はどうなるのか?
それでは今後、建設キャリアアップシステムの公共工事での活用機会はどのような流れになるのでしょうか。現時点では、今後も公共工事への導入は拡大していき、公共工事の現場に入る為には、実質的に登録が義務となる可能性がより高まると予想されます。そもそも、これだけ公共工事で建設キャリアアップシステムが活用されてきたことには、明確な理由があります。それは、キャリアアップシステムが国主導で運用し、導入を進めている制度だからです。国は当初2023年には、民間工事も含めた全ての工事でキャリアアップシステムを導入する目標を立てていました。結果は現状の通り民間工事に普及したとは言い難い状況ですが、国としては、まずは強制力の働かせやすい公共工事から、完全普及を目指しこれまで様々なインセンティブを加えてきました。その為、この流れは加速することはあっても、弱める理由がないのです。
経審改正により登録が必要な機会はさらに増えると予想される
この流れを加速させると考えられる最大の理由は、経営事項審査に令和5年から導入された「建設キャリアアップシステムの現場運用による加点」です。詳細は別の記事で解説していますが、令和5年の経審改正により、キャリアアップシステムの現場運用をしていない会社は、経審の点数が下がってしまう状況になりました。これは公共工事を事業の主軸に置いている会社にとっては死活問題にもなりかねず、キャリアアップシステムの現場運用を徹底せざるを得ない状況になりました。
その為、今後は特に、公共工事の現場や公共工事に注力している元請業者の現場においては、キャリアアップシステムに登録していないと入れない現場が、増えていくことが予想されます。
まとめ
以上、ここまで建設キャリアアップシステムの公共工事での活用状況と、今後の動向について解説してきました。今後、公共工事の現場では、建設キャリアアップシステムの登録や運用が必須となっていくことが予想されます。公共工事に関係ある会社様は、下請け業者様も含めて、今からキャリアアップシステムの導入を検討されることをオススメします。