建設キャリアアップシステム(CCUS)とは?10分で解説

建設キャリアアップシステム(CCUS)とは

近年、建設工事の現場で「建設キャリアアップシステムに加入しないと現場に入れない」という話を聞く方も多いのではないでしょうか?建設キャリアアップシステムは国が主導で進める制度で、現在その普及が急速に進んでおり、工事関係者はぜひ知っておきたいトピックスになります。本記事では建設キャリアアップシステムについてその概要から加入しないリスクまでわかりやすく解説していきます。

目次

建設キャリアアップシステム(CCUS)とは

キャリアアップシステムとは

建設キャリアアップシステム(略称CCUS)は、2019年から国土交通省が中心となって建設業界に導入を進めている、建設現場で働く技能者のキャリアを、国の統一システムで蓄積していくシステムです。またシステムの中に、技能者の保有資格情報や社会保険の加入状況なども登録することで、技能者の適切な賃金評価が促進され、建設技能者の労働環境の改善を図っていくことを目指しています。

建設キャリアアップシステムの概要と仕組み

建設キャリアアップシステムは、2019年4月より一般財団法人建設業振興基金によって運用が開始されており、2023年3月末時点で技能者が約114万人、事業者が約22万人登録しており、すでに技能者の3人に1人が登録しているシステムになっています。

システムの仕組みは以下の通りで、システムに登録した技能者にはカードが発行され、そのカードを現場に設置されたカードリーダーに現場入場の際にタッチすることで、就業履歴が蓄積されていく仕組みになっています。その蓄積された技能者のキャリアが見える化することで、技能者や事業者にメリットがあり、建設業界の労働環境が改善していくことが期待されています。

STEP
システムへの登録(カードの交付)

技能者の氏名や住所などの基本情報、社会保険や雇用保険加入の有無、保有している資格などをシステム登録すると、カードが個別に交付される。

STEP
就業履歴の蓄積(現場でのカードタッチ)

技能者1人1人に交付されたカードを、現場に設置されたカードリーダー(設置は元請事業者が行う)に入場の際にタッチすることで、就業履歴が蓄積されていく。

STEP
技能者の技能・経験を評価につながる

蓄積されたキャリアや資格に応じて、カードのレベルが上がっていき、技能者の能力に見合った適切な賃金評価が行われる事が期待できる。

STEP
事業者は専門工事業の施工能力のPRにつながる

事業者は、所属する技能者のレベルや人数等を、システムを通じて公表することで、発注者や元請けに施工能力をアピール出来、受注機会の拡大につながることが期待できる。

システムの概要

引用:一般社団法人建設業振興基金

建設キャリアアップシステムの目的

国が建設キャリアアップシステムを導入した目的には、建設業界の深刻な人手不足が背景にあります。近年、特に若い人が建設業界から減少し、このままでは業界の存続も危惧されており、その原因のひとつには技能者の賃金が上がっていかないことにあると国は考えました。そこには、職人として色んな現場を渡り歩く働き方が一般的な建設技能者は、そのキャリアが蓄積されにくいという、建設技能者特有の課題が関係していました。そこで、国が主体で運用するシステムに技能者のキャリアを蓄積することで、その課題を解決することができると国は考えました。そうして誕生したシステムが建設キャリアアップシステムというわけです。

建設キャリアアップシステムの加入義務

それでは、この建設キャリアアップシステムは建設工事に関与する人は必ず加入しなければいけないシステムなのでしょうか?2023年現在、建設キャリアアップシステムは任意の制度となっています。つまり加入は義務ではありません。

※例外として、建設分野の外国人を雇用する事業者(技能実習生や特定技能外国人)は必ず加入しなければならないルールとなっていますのでご注意ください

しかし、なぜ加入義務のないシステムにこれだけ多くの事業者や技能者が登録しているのでしょうか?ここから建設キャリアアップシステムに登録しないリスクを考えていきます。

建設キャリアアップシステムに登録しないリスク

建設キャリアアップシステムに登録しないリスクは以下のようなものが考えられます。

①現場に入れない可能性がでてくる

建設キャリアアップシステムに登録している元請け事業者の現場では、建設キャリアアップシステムに登録している下請け事業者しか入れないという事が今後増えていくと考えられます。公共工事の総合評価や経営事項審査の加点要件に、建設キャリアアップシステムの現場運用が令和5年から追加される為、特に公共工事を行う元請け事業者の現場では、これらの傾向が強くなると予想されます

②公共工事への影響がでてくる

建設キャリアアップシステムの登録を、公共工事の総合評価や入札参加資格申請時の加点要素とする自治体が全国で増えています。例えば、福岡県では、競争入札参加資格審査における地域貢献活動評価項目において、建設キャリアアップシステムの登録を加点対象としています。また、令和5年から建設キャリアアップシステムの登録や現場運用が経営事項審査の加点要件となり、さらに公共工事への影響が強くなっていくことが現実的となっています。

※建設キャリアアップシステムの経営事項審査への影響については「建設キャリアアップシステムで経審に加点!未登録は減点も?」でも詳しく解説しています

③技能者や取引先から選ばれにくくなる

今後ますます建設キャリアアップシステムの普及が進めば、登録をしていない事業者は、技能者の労働環境を整えていないという見方をされ、技能者や取引先から徐々に選ばれなくなっていく可能性があります。どの業界でも働き方改革が叫ばれ、人材の取り合いになっている中、近い未来に起きうる可能性が高いリスクとして考えられます。

これらのリスクが発生してから登録をすれば良いという考え方もありますが、建設キャリアアップシステムに登録しカードが発行されるまでには早くても2か月程度時間がかかる為、登録が間に合わず、入れたはずに現場に入れなかった、という事が実際におきてしまうリスクがあるのです。

※建設キャリアアップシステムの登録義務とリスクについては「建設キャリアアップシステム(CCUS)は義務?いつから?」でも詳しく解説しています

建設キャリアアップシステムに登録するメリット

それでは建設キャリアアップシステムに登録するメリットはどういったものがあるのでしょうか。本来、技能者の為のシステムの為、技能者は自身のキャリアが蓄積されるという大きなメリットがあります。一方で事業者にも以下のようなメリットが考えられます。

※建設キャリアアップシステムのメリットについては「建設キャリアアップシステム(CCUS)のメリットを解説!」でも詳しく解説しています

①取引先や技能者へのアピールができ、選ばれやすい会社になる

技能者のことを考え、建設キャリアアップシステムを取り入れている事業者として、取引先や技能者にアピールすることができ、仕事の受注や人材確保の面で有利に働くことが期待できます。また、下請け事業者であれば、自社の抱える技能者のキャリアや保有資格を元請け事業者にアピールしやすくなるというメリットもあります。

②事務作業などが簡素化やコンプライアンス強化に繋がる

カードによる勤怠管理や、キャリアやスキルの見える化による採用の効率化、また現場が完了した後でも入退場情報が確認できトレーサビリティがとれるなど、事業者の業務負担の軽減やコンプライアンス強化が期待できます。また特に元請け事業者は、現場に入る下請け事業者やその技能者の社会保険加入状況の確認なども簡単に行え、現場管理が効率的に行えるようになります。

また、建退協とキャリアアップシステムを連携し、建退協の電子申請を簡易的にできる仕組みも整えられており、建退協に加入している事業者は作業を簡便化することが可能です。
※詳しくは「建退共の電子申請を建設キャリアアップシステムで楽に行う方法」を参照ください

建設キャリアアップシステムの利用にかかる費用

建設キャリアアップシステムの利用にかかる費用は「登録時にかかる費用」と「運用時にかかる費用」の2つにわけて考える必要があります。それぞれについて説明していきます。

※建設キャリアアップシステムの利用にかかる費用については「建設キャリアアップシステムの利用料金は?下請は無料?」でも詳しく解説しています

システムへの登録時にかかる費用

建設キャリアアップシステムを会社が利用するには、まず会社の情報を登録する「事業者登録」を行い、そのあとに所属技能者の情報を登録する「技能者登録」を行う必要があります。なお、1人親方の場合も、事業者登録と技能者登録の両方をする必要があります

①事業者登録にかかる費用

事業者登録には事業者登録手数料がかかります。料金は事業者の資本金額によって以下の表の通り決まっています。

資本金額登録料(税込)
1人親方無料
500万円未満(個人事業主含む)6,000円
500万円以上~1,000万円未満12,000円
1,000万円以上~2,000万円未満24,000円
2,000万円以上~5,000万円未満48,000円
5,000万円以上~1億円未満60,000円
1億円以上~3億円未満120,000円
3億円以上~10億円未満240,000円
10億円以上~50億円未満480,000円
50億円以上~100億円未満600,000円
100億円以上~500億円未満1,200,000円
500億円以上2,400,000円

②技能者登録にかかる費用

技能者登録にも技能者登録手数料がかかります。料金は登録の種類によってことなり、簡略型は2500円、詳細型は4900円となっています。

登録種別登録料(税込)
簡略型2,500円
詳細型4,900円

なお、簡略型と詳細型では登録できる情報の項目数が異なり、詳細型は技能者の資格情報や健康診断の受診履歴などを登録できる一方、簡略型はそれらの情報の登録ができません

システムの運用時にかかる費用

建設キャリアアップシステムは登録後の運用時にも費用がかかります。運用時にかかる費用は下請け元請け関係なくかかってくるID利用料と、元請け事業者にのみかかる現場利用料の2つがあります。

①ID利用料

事業者登録をした事業者には最低1つ以上の管理者IDが発行されます。この管理者IDを使って、会社情報や、元請け事業者であれば現場情報をシステムに登録することができます。この管理者IDは1つにつき年間11400円の利用料がかかります。

建設キャリアアップシステムを利用する為には管理者IDが最低1つは必須になる為、この年間費用は必ず発生する費用になります(管理者IDは費用を払えば2つ以上持つことも可能です)。

②現場利用料

現場利用料は現場を開設する元請け事業者にのみかかる費用になります。建設キャリアアップシステムを現場で利用する為には、現場の元請け事業者が現場情報をシステムに登録し、さらに現場にカードリーダーを設置しなければいけません。そのカードリーダーに、現場に入る技能者がカードをタッチする事で就業履歴が蓄積されていきますが、そのタッチひとつにつき10円の現場利用料が元請け事業者にかかります

例えば、毎日技能者50人が出入りする工期が10日間の工事があったとすると、現場利用料はトータルで下記の通り発生します。

10円×50人×10日=5,000円

建設キャリアアップシステムを利用するには?

建設キャリアアップシステムを利用するには、以下のような手順で、元請け下請けがそれぞれに、登録と準備を行う必要があります。なお、登録には審査がありますので、実際にカードが発行されて現場でタッチが可能になるには2~3ヶ月程度時間がかかるので注意しましょう。

STEP
事前登録

まずは建設キャリアアップシステムへの登録を行います。順番としては、最初に会社情報をシステムに登録する「事業者登録」を行います。事業者登録が完了したら、次に所属技能者の情報を登録する「技能者登録」を行います。技能者登録まで完了すれば、技能者一人一人にカードが交付されます。なお、事業者登録も技能者登録も、原則Web申請になりますので、24時間いつでも申請が可能です。申請後に審査があり、申請内容に不備等がなければ、それぞれおよそ1ヶ月程度で登録が完了します。

なお、グリーンサイトを利用している事業者は、グリーンサイトとキャリアアップシステムを連携させ、グリーンサイトの登録情報を技能者登録の登録時に紐付け、申請を楽に行うことも可能です。
※詳しくは「建設キャリアアップシステムとグリーンサイトの連結方法」を参照ください

STEP
現場運用(現場情報の登録とカードリーダ設置)

現場に入る元請け事業者と下請け事業者の、全ての登録が完了したら、次はシステムに現場情報を登録します。この現場登録は元請け事業者が主導で行い、施工体制登録などは、下請け事業者と協力しながら行います。この現場登録時に、現場に出入りする技能者が作業員として登録されていないと、現場でカードをタッチしても就業履歴が正しく蓄積されないので注意しましょう。

STEP
就業履歴の蓄積

現場登録が完了したら、元請け事業者が、現場にカードリーダーを配置します。あとは、技能者自身が現場に入る際に、カードリーダーでカードをタッチすることで、就業履歴がシステムに蓄積していきます。システムに登録された情報はいつでもWebから閲覧が可能で、登録情報に変更があった際もシステム上で変更申請が可能になります。

CCUS利用手順

引用:一般社団法人建設業振興基金

建設キャリアアップシステムに登録するか迷っている方へ

建設キャリアアップシステムへの登録をするかしないかで迷っている方も多いと思います。登録をしないメリットは費用面だけで、それと比較してデメリットやリスクが多いことから、迷っているのであれば登録されることをお勧めします。

建設キャリアアップシステムの登録は任意とはいえ、国が強く普及を進めているシステムですので、今後様々な制度の活用にシステムの登録が前提となっていく可能性が高いです。現に公共工事を請けている会社は、キャリアアップシステムの現場利用がほぼ義務化されつつあり、この流れが民間工事にも派生すると、今まで入れた現場に入れないリスクが出てきます。カードの発行には全ての登録作業を完了させる必要があり、通常2~3ヶ月かかってしまいます。またキャリアアップシステムは登録が早ければそれだけ就業情報の蓄積が早くなりますので、技能者にとってのメリットを考えると登録は早い方が良いです。

※建設キャリアアップシステムと公共工事の最近の動向については「建設キャリアアップシステムは公共工事では必須?今後の動向も」でも詳しく解説しています

登録に時間が取れない場合は、当サイトの運営者である長﨑行政書士法人の登録代行を活用頂ければ、そこまで費用負担をかけずに登録を代行してもらうことも可能ですので、ぜひ一度ご検討ください。

まとめ

以上、ここまで建設キャリアアップシステムの概要をご紹介してきました。本サイトでは、建設キャリアアップシステムの登録時の疑問から運用時の疑問まで、建設キャリアアップシステムのお困りごとを解決するための情報を幅広く発信しております。本サイトを参考に、ぜひ建設キャリアアップシステムの有効な活用を進めて頂けると幸いです。

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この記事を書いた人

大西 一路のアバター 大西 一路 行政書士

建設業専門の行政書士法人「長﨑行政書士法人」の代表行政書士
専門分野:建設業許可・経営事項審査・入札参加資格申請・CCUS登録代行
資格:行政書士/CCUS登録行政書士/建設業経理士

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