建設キャリアアップシステムで経審に加点!未登録は減点も?

経営事項審査

建設キャリアアップシステムが経営事項審査の加点対象となりました。しかし加点ルールが少し複雑で混乱している事業者様も多いと思います。本記事では、建設キャリアアップシステムで経審の加点を取る方法をわかりやすく解説していきます。

※建設キャリアアップシステムって何?
建設キャリアアップシステム(略称CCUS)は、技能者の就業履歴などのキャリア情報を記録していく国が管理するシステムです。技能者に発行されるカードを現場でタッチすることで活用することができます。
詳しくは「建設キャリアアップシステム(CCUS)とは?10分で解説!」を参照。

目次

建設キャリアアップシステムの経審加点の概要

経営事項審査(略称:経審)の点数(通称P点)は評価項目の異なる4つの点数(X点、Y点、Z点、W点)の合計で決まりますが、建設キャリアアップシステムで加点される項目は、この中のZ点とW点に含まれます。さらにW点の中で加点項目が2種類あり、非常にややこしい仕組みになっています。全ての項目について解説をしていきますが、まずは多くの事業者様にとって関係の深いと思われるW点から説明をしていきます。

W1の⑩「CCUSの導入状況」による加点

社会性点であるW点は、令和5年の法改正により10項目の評価要素ができましたが、その中の1項目でCCUSの導入状況が加点対象となります。加点要件は2種類あり、難易度によって加点される点数も異なります。

直近の事業年度において、全ての公共工事の現場で建設キャリアアップシステムを導入していた場合は10点の加点が、民間工事を含めた全ての現場で導入した場合は15点の加点になります。
※ただし、①軽微な工事(500万円未満の工事)②海外での工事③災害応急工事、の3つは審査対象の工事に含めません(導入していなくてもOK)

加点要素加点
審査対象工事のうち、民間工事を含む全ての建設工事で該当措置を実施した場合15点
審査対象工事のうち、全ての公共工事で該当措置を実施した場合10点

なお、審査基準日以前1年間で対象工事を1件も請負っていない場合は、加点はありません

加点の為に必要な措置に注意しよう

当該加点を認めてもらうには、以下の措置を全ての対象工事で必ず行う必要があります

①建設キャリアアップシステム上での現場・契約情報の登録
②直接入力によらない方法でシステム上に就業履歴を蓄積できる体制の整備
③経営事項審査申請時に様式第6号に掲げる誓約書の提出

②の直接入力によらない方法とは、カードリーダーのような現場で入退場履歴を記録できる措置を実施している必要があるという事です。直接入力とはようはパソコンでシステムに直接就業履歴を入力することで、それを認めてしまうと現場ではキャリアアップシステムを導入せずに現場が終わればまとめて会社で履歴を入力するようなことも出来てしまうからです。

対象は令和5年8月14日以降を審査基準日とする申請から

本加点は令和5年8月14日以降を審査基準日とする経営事項審査から対象になります。そのため、7月決算の会社の場合は、令和5年度の加点がつきませんのでその点は注意しましょう。また、9月決算の会社の場合は、令和4年10月からの決算日までの工事が全て対象になりますので、すでに導入ができていなければ加点は取れない点も注意しましょう。

W1の⑧「技能の向上に関する取り組みの状況」による加点

W点の加点項目のもう一つがこの「技能の向上に関する取り組み状況」です。加点の仕組みとしては、まず審査基準日において、基準日前3年間における能力評価基準(キャリアアップカードのレベル判定)において、レベル2以上にアップした建設技能者の数を、基準日における所属技能者の数(基準日より3年前時点において既にレベル4の者を除く)で割ることで、その割合求めます。

この割合が大きく、かつその他の一定条件をクリアすれば、そのクリア状況に応じてW点が最大10点加点されることになります(この項目は計算式が非常に複雑なため、詳細の記載は控えます)。まずは、社内の技能者をキャリアアップシステムに登録し、カードのレベルをあげていけばいくほど、加点の可能性が出てくると覚えておきましょう。

技能者の範囲に注意が必要です

技能者は、現場の施工を直接行う作業者のことを指します。現場で施工管理だけをする現場監督や主任技術者は技能者には含まれませんので注意しましょう。なお、現場の管理をするけど現場作業もする!という方であれば、技能者としても扱われますので加点対象になります。

レベル3または4の職員数に応じてZ点を加点

会社の技術力を点数化するZ点の中では、技術職員(資格保有者や一定の実務経験がある者)の数が点数の要素となっており、その中で、登録基幹技能者には3点、技能士1級には2点が付与されています。そこに、建設キャリアアップシステムのレベルに応じた加点も加わることになりました

建設キャリアアップシステムにおいて、レベル3と判定された者には技能士1級と同等のレベルと評価し2点を、レベル4と判定された者には登録機関技能者と同等レベルと評価し3点の加点対象になります。

建設キャリアアップシステムに登録しないことによる点数への影響

ここからは、建設キャリアアップシステムに登録しないと点数はどうなるのかを検証していきます。前提として、すでに経営事項審査を受けている会社が、キャリアアップシステムに登録をせずに前年と同じ条件で経営事項審査を受けた場合の点数への影響とします。

まず、Z点での加点は純粋に加点になるかならないかだけなので、登録しないことによる点数の影響(減点)はありません。問題になるのはW点の方になります

令和5年の経営事項審査のルール改正により、W点は加点項目が増えました。それにより、総合評点(P点)に占めるW点の割合が大きくなりすぎてしまう為、W点の算出に使用する係数が下げられました(1900/200⇒1750/200)。

つまり、今までW点の各項目合計が100点だったとすると、これまでは100×1900/200=950点が最終的なW点として評価されていた所を、これからは100×1750/200=875点となり、キャリアアップシステムに登録をしなかっただけでW点が75点も下がってしまうことになるのです。これはP点換算で11.25点の減点になります。この係数変更によるP点への影響は、W点が大きい会社ほどその影響度も大きいので注意が必要です。

点数を下げないためにはいつまでに登録する必要があるのか?

それでは、この未登録による減点を避けるためには、いつまでにキャリアアップシステムに登録をしなければいけないのでしょうか?

答えは「今すぐにしましょう」ということになります。これは言い過ぎではなく、むしろ今すぐに登録に取り掛かっても、次の経営事項審査には間に合わない可能性もあります。

W点の建設キャリアアップシステムの導入状況による加点は、基準日以前1年以内に請け負った工事が対象になる為、もう今の時点で、次回審査にかかる対象期間になっていることになります。そうなると、ほとんどの場合、民間工事を含む全ての建設工事で導入した場合の15点加点は受けられない可能性が高く、可能性があるとすれば全ての公共工事で導入した場合の10点加点の方になります。

次の審査までの間に、キャリアアップシステムの登録を完了し、その後に公共工事を請け負った現場にキャリアアップシステムを導入する。ここまでして初めてW点の加点が受けられます。冒頭で「今すぐにしましょう」という答えになった理由がご理解頂けたかと思います。

まとめ

以上、ここまで建設キャリアアップシステムの登録により経営事項審査で加点を取る方法について解説してきました。登録しないことで減点リスクがあることは意外と知られていないため、本記事を参考に、一度自社の点数をシュミレーションされることをおすすめいたします。

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この記事を書いた人

大西 一路のアバター 大西 一路 行政書士

建設業専門の行政書士法人「長﨑行政書士法人」の代表行政書士
専門分野:建設業許可・経営事項審査・入札参加資格申請・CCUS登録代行
資格:行政書士/CCUS登録行政書士/建設業経理士

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